美山町は、かやぶきの里として有名
過去のブログで、京都の松上げという火祭りを何ヶ所か紹介しています。
今年(2016年)は、まだ撮影していない何ヶ所かのうち、美山町の松上げと、福井県小浜市の松上げを撮影してきました。
小浜市は、後日掲載することにします。
他の場所の松上げの過去ブログは、こちらです(ご参考にご覧下さい)
美山町は、かやぶきの里として、茅葺の古民家集落が保存されていることで全国的に有名な場所です。
JR京都駅からバスに乗ると、2時間以上かかる場所です。
冬(2月)の風景
美山町の松上げは、8月24日実施。3カ所で「上げ松」と呼ばれ、1カ所で「松上げ」と呼ばれる
美山町は、町と言っても広大な面積の山林の中にあります。
ここには、四ヶ所で松上げが行われますが、盛郷(もりさと)地区、殿(との)地区、川会(かわい)地区の三ヶ所は、松上げではなく上げ松と呼びます。
残る芦生(あしお)地区は、松上げと呼びます。
地図を作成しました。
美山かやぶきの里に行ったことがある方は、イメージできるかと思います。
盛郷の上げ松を見てきた
上げ松の当日、四ヶ所の会場を順番に見てきました。
芦生地区の松上げ会場です。
美山かやぶきの里を通過して芦生地区に向かいます。
午前中に到着しましたが、トロ木はまだ横たわったままでした。
午後、傘が組み立てられ、トロ木が垂直に立てられるはずです。
殿地区の上げ松会場です。
美山の中では比較的にぎやかな場所です。
こちらは、大勢の人たちが準備を始めたところでした。
川会地区は、殿地区と隣り合わせでお互いが見通せるほどの場所なのですが、今年(2016年)は、上げ松は実施されませんでした。
人口減により人手が集まらないことが理由のようでした。
盛郷(もりさと)地区の上げ松会場です。
ここは、すでに準備が進んでいました。
トロ木が大きい、さらにもう一本小さなトロ木がある、など他の地区と少し変わっていると思ったので、今夜の撮影は、ここ盛郷の「上げ松」に決めました。
盛郷の燈籠木(トロギ)の立ち上げ
松上げ(美山では、上げ松という)は、高さ20メートル程度の木の柱のてっぺんにワイングラスとかシャンパングラスのような形の入れ物を作ります。
木の柱を燈籠木(とろぎ)、てっぺんの入れ物を大傘(おおがさ)または、「もじ」と呼ぶのが一般的です。
盛郷ではお昼過ぎから、上げ松の準備が始まりました。
上げ松の由緒書きに描かれているように、ここ盛郷では、二本のトロ木が立てられます。
大人用と子供用ということでしたが、夜に成っても子供は現れず、二本とも大人が火をつけました。
「もじ」の組み立て作業です。
京都から福井県にかけて各地で行われる松上げ(上げ松)では、場所ごとに「もじ」の形や作り方が異なります。
ここ盛郷の「もじ」は、本格的、伝統的な手間のかかるものでした。
いよいよトロ木の立ち上げです。
クレーンを使って、短時間で立ち上がります。
クレーンがなかった時代には、様々な長さの支え棒を使いながら少しづつ立ち上げた、大変な作業だったはずです。
盛郷のトロ木は、伸縮する構造
ここ盛郷のトロ木を見たとき、他の地区のものと異なることに気づきました。
作業していたご老人にお聞きしたところ、昔は一本の杉の木だったが、若者が少なくなりトロ木の立ち上げが難しくなったので、アンテナのように伸縮する構造にしたとのことでした。
短いトロ木を立ち上げた後で、先端の芯木を2メートルほど持ち上げるのだそうです。
盛郷の「放り上げ松」のことをなんと呼ぶのかを聞きそびれたのですが、写真だけは撮影できました。
いよいよ、上げ松の開始
夜8時、公民館から、太鼓と笛の行列がやってくると、いよいよ上げ松が開始です。
撮影は長時間露光と多重露光という方法で行いました。
また、カメラは2台設置して、1台は川の対岸から、もう1台はトロ木のすぐ近くに三脚で設置し、川の対岸にいる私が、無線シャッターを押して撮影しました。
なので、同じ時間帯なのですが、異なる画角の画像があります。
開始後、大小二本のトロ木に同時に火のついた放り上げ松が投げられますが、小さい方に集中します。
近いカメラからの画像です。
開始後1時間以上経ってもなかなか「もじ」に火が乗りません。
と言うより、高さ20メートル以上ある「もじ」に放り上げ松が届かないのです。
「もじ」は、夜空の中で見えにくいこともあり、サーチライトで「もじ」が照らされました。
私は、川の対岸からトロ木の近くに移動して撮影を続けました。
開始から2時間を過ぎた夜10時過ぎ、ついに「もじ」の上に火が乗ったのです。
皆が一斉に大拍手。
本当は、この後、トロ木が倒されて火祭りは終わるのですが、この日は滑車の故障でトロ木を倒すことができませんでした。
どうしたかというと、消防車のホースで水をかけて消したのです。
ところが、ビルなどない盛郷の消防車は、20メートル以上の高さの「もじ」に放水の水がなかなか届かない。
ホースを、トロ木の真下まで持って行って、ようやく鎮火しました。
これも、滅多に見ることができない貴重な風景でした。